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2016-10-11

判断が難しい資本的支出と修繕費

事業を営む上で、少なからず必要となってくるのが固定資産のメンテナンスや修繕です。
これらの費用については、法人税法上で固定資産として計上しなければならない場合と、一時の損金として計上できる場合とがあります。


(1)資本的支出
固定資産として計上し、数年かけて減価償却します。
修理、改良のために支出した金額のうち、その固定資産の価値を高めたり、耐久性を増すこととなる部分に対応する金額が資本的支出となります。
例えば次のような費用が挙げられます。
・建物の避難階段の取付等、物理的に付加した部分に係る費用
・用途変更のための模様替え等、改造または改装に直接要した費用
・機械の部品を品質や性能が高いものに取り替えた場合の費用(通常の取り替えに要する費用を超える部分)


(2)修繕費
一時の損金として計上できます。
修理、改良等のために支出した金額のうち、通常の維持管理のためや原状回復するために要した金額が修繕費となります。
また、一定の条件はありますが、下記のような費用も修繕費に該当するとされています。
・建物の移えいや解体移築に要した費用
・機械装置の移設に要した費用
・地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するための地盛りや床上げ、地上げ等に要した費用
・使用している土地の水はけを良くするために行う砂利、砕石等の敷設、補充するために要した費用

資本的支出になる場合と修繕費になる場合では課税所得に大きく影響するので、正しく処理する必要があります。
しかし、実際はどちらにあたるのかの判断は非常に難しく、頭を悩ませている方が多いのではないでしょうか。
そのため、次のような形式的な判断基準が設けられています。
(2以上の複数の資産によって構成されているような設備の場合、総合して判定す
必要はなく、個々の資産ごとに判定することになります。)

(1)少額の費用
修理、改良等が20万円に満たない場合、価値を高めたり、耐久性を増すこととなるような資本的支出にすべき条件に当てはまっていても、修繕費として損金経理をすることが認められています。
【例】避難階段の取り付けに15万円支出した。
資本的支出の条件に当てはまっているが、支出額が20万円未満なので、修繕費とすることができる。

(2)定期的に支出する費用
修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが、既往の実績その他の事情からみて明らかな場合についても、修繕費として損金経理することが認められています。
【例】機械装置の修理に30万円支出した。この修理は1年毎に定期的に行っているため、20万円以上だが修繕費とすることができる。

(3)形式的基準による判断
簡便的な方法として、資本的支出か修繕費の判断が困難な金額がある場合、「①60万円未満」または「②前期末取得価額の10%相当額以下」のときは修繕費として損金経理ができます。
【例】機械装置(前期末取得価額700万円)の修繕等を行い65万円を支出したが、資本的支出か修繕費かの判断が困難である。
②に当てはまるので、修繕費とすることができる。

(4)資本的支出と修繕費の区分の特例
(1)~(3)の適用を受けるもの以外の修理、改良等のために要した費用の額のうちに、資本的支出か修繕費の判断が困難な金額がある場合、「支出金額の30%相当額」と「前期末取得価額の10%相当額」のいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とすることができます。
ただし、継続してこの経理処理を行っていることが条件となります。

参考 法人税基本通達7-8-1から7-8-5

※ 2016年9月29日作成
※ 作成日現在の法令にもとづき作成しています。