お役立ち情報
2022-12-20
新しい収益の認識基準を知っていますか?
【質問】
上場会社を中心に2021年4月1日開始事業年度から導入された、収益の認識基準の考え方を簡単に教えてください。今までの会計処理を変更する必要がありますか?
【回答】
新会計基準は顧客との契約から生ずる収益に関する会計処理及び開示について適用される内容で、上場企業やその連結会社など監査法人監査を受ける企業等に強制適用されています。なお、従来の会計基準と共存する内容であることから、これまで一般に公正妥当と認められる会計原則に従い、収益計上をしてきた企業が、対応を要求されるものではありません。ただし、上場会社等と取引をしている会社では影響がある可能性も否定できませんし、その内容を知っておくことは、有意義だと思います。
この収益の認識基準の基本は、約束した財又はサービスの顧客への移転を、当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益を認識しようというもので、5つのステップを経て収益を認識します。
①顧客との契約を識別
②契約における履行義務(収益認識の単位)を識別
③取引価格の算定 ⇒ 値引き、リベート、返金等、取引の対価に変動性のある金額が含まれる場合は、
その変動部分の金額を見積り、その部分を増減して取引価格を算定
④契約における履行義務に取引価格を配分
⑤履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識
(注) 長期割賦販売等に係る延払基準による収益認識は認められません。
様々な取引に適用できるように、考え方のエッセンスを基準としていることから、具体的に影響があるかどうかは、個別に契約内容を実態と照らし合わせて検討する必要があります。
今後、5つのステップの具体的な事例へのフィードバックの仕方を、業種別にQ&Aでご案内したいと思っています。
ちなみに、現行の中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)では、売上計上について、次のように記載されています。
収益のうち、企業の主たる営業活動の成果を表す売上高は、製品、商品の販売又はサービスの提供を行い、かつ、これに対する対価(現金 及び預金、売掛金、受取手形等)を受け取った時(売掛金の場合には、発生した時)に認識するのが原則的な考え方です(一般に「実現主義」といいます。)。 実務上、製品や商品の販売の場合には、売上高は、製品や商品を出荷した時に計上する方法が多く見られますが、各々の企業の取引の実態に応じて、決定することとなります。
いわゆる、従来の一般的に公正妥当と認められる企業会計原則で取り上げられている「実現主義」の考え方です。商品の引き渡しをして、これに対する対価が客観的に測定できることとなった時点で売上を計上する考え方で、実際の入金があったときに売上を計上する「現金主義」に比べて、より早い時点で売上を計上します。
売上計上はもっとも重要な取引の一つですが、これまで売上の計上時期をあまり意識していなかった方もおられると思います。このコラムが、自社の売上計上のルールを再確認するいい機会となればと思います。
※2022年12月1日作成
※作成日現在の法令にもとづき作成しています。